2017年1月11日水曜日

失恋を悔やむより、自分にとって最後の経験だと思うことだ

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マルセル・プルースト
嫉妬のおかげで女を所有する楽しさも感じられれば、女と一緒に馬車に乗ったり、相手のひとり歩きを禁じたりするときに、ほっとした気持ちを覚えることも可能になる。

侮辱を受けた恨みや、捨てられた苦痛は、そんなことがなければ永久に知り得なかったような土地であり、その土地の発見は、それが人間としてどれほど苦しいことであろうとも、芸術家にとっては貴重なものとなる。

「でもわたし、あの子があなたの気に入るとは思わないわ。だって、ちっとも惚れっぽい子じゃないんですもの。あなたはね、きっと惚れっぽい女の子が好きになるわ」

昔の一日一日は、私たちの内部に納められている。ちょうど巨大な図書館には、どんな古い書物でもかならず一冊は納められているように。
あるイメージの追憶とは、ある瞬間を惜しむ心にすぎない。そして家や、道や、通りは、逃れて消えてしまうのだ。ああ!ちょうど歳月のように。

なんということだ!エレガンスというものが失われてしまった今日、私の心を慰めるのは、ただかつて知っていた婦人たちに思いをはせることだけなのだ。

私は自分の覚えたおそろしく大きな苦悩について、ほとんど誇らしいともいえる気持、ほとんど喜びにも似た感情を抱いた。それは人が何かのショックを受けて跳び上がったために、どんなに努力しても上れない高い地点に到達してしまったような、そうした感情だった。

あまりに幸福すぎたために、もう二度と思い返してみようともしなかったあのころ、彼女から愛されていたあの何ヵ月かのあいだでさえ、もう彼女は嘘をついていたのだ!

決定的に彼女と別れることができないのなら、せめて短い別離を繰り返すこともなく、常に彼女に会っていることはできないか。そうなれば彼の苦悩もいつか鎮まっただろうし、愛情も消えたことだろう。
長いあいだ、私は早く寝るのだった。ときには、蝋燭を消すとたちまち目がふさがり、「ああ、眠るんだな」と考える暇さえないこともあった。